Number 19
投稿年月日 2016年8月5日
題名 多様性
内容 日々成長する子どもたちのために 多様性のある環境、多様な能力の発揮できる環境をどう作ることができるかが必要とされ ていると考えています
投稿者 副園長 邨橋 智樹 

2016年8月号 多様性

巻頭言

「多様性」という言葉をいろいろなところで聞きます。国連の国際年にも「2011~2020年 生物多様性の 10 年」と言われる国際決議がされています。ビジネスの世界では「ダイバ ーシティ」という言葉があり、組織における多様性が叫ばれています。ダイバーシティは 英語で「多様性」を意味する言葉です。多様な人種を抱えるアメリカで生まれた考え方を 発展させたもので、人種に限らず、性別、年齢、個性、価値観、健康状態、さらには働き 方の違いなど、あらゆる多様性を積極的に受け入れることで、優秀な人材を幅広く確保し、 ビジネスの成長につなげようとする考え方です。このように幅広い人材を確保し、多様な 能力を発揮することは企業でも改めて注目され始めてます。一人ひとりの人権を尊重しつ つ、適材適所によってそれぞれの能力が最大限に発揮されれば、多様な視点で問題解決に 臨んだり、既存の慣習や概念にとらわれたりしない斬新なアイデアを創出したりなど、多 くの効果が期待できるという考えです。

 

最近の企業におけるこのような考え方は乳幼児教育施設において、非常に参考になる話で す。私は保育においても、 「多様性」は非常に重要だと考えています。これまで考えられて いた集団で「よい集団」とは、同質であることを良しとして、同質になるような教育をし てきた歴史があります。そして、それが戦争にまで突き進んでしまったという苦い歴史が あります。しかし、集団とは決して同質を求めるのではなく、多様性を認め、その中で個々 が光り輝くことが良い集団であり、また良い集団こそが個々の輝きを増すと考えていま す。この集団は子ども集団だけではなく、職員集団においても大切な内容です。私たちは 今、チーム保育をしていますが、複数の大人と子どもたちが接することで多様な発達理解、 環境構成の工夫、様々な価値観を体験することになり、それが社会で生きる子どもたちの 力を育むと思っています。様々な価値観に子どもたちが接するためにはチーム保育の方が より、その経験が多くなります。また、職員集団においても同質性をもとめるのではなく、 多様な能力を発揮することが大切になります。

 

多くの乳幼児施設の機能は「母親の代わり」 「保護者の代替え」というイメージがありま す。そうすると、子どもにとって、母親は一人であると考え、その代りの人も一人である べきだと考えがちです。また、学校教育施設としては、小学校の担任のイメージがあり、 ある子ども集団という単位に一人の大人が担任するという考え方になります。

 

しかし、本来子どもを育てるのは親だけでなく、学校の担任でなく、社会であると考える と、多様な大人の中で育てられるべきだと思っています。それは乳幼児施設が単に世話を するところではなく、知識を伝達するところでもなく、日々成長する子どもたちのために 多様性のある環境、多様な能力の発揮できる環境をどう作ることができるかが必要とされ ていると考えています。