Number 13
投稿年月日 2016年2月10日
題名 子ども研究
内容 赤ちゃんを総合的にとらえ、医療、工学、心理学、社会学など多面的な視点か ら赤ちゃんを研究する学会です
投稿者 副園長 邨橋 智樹 

2016年2月号 子ども研究

巻頭言

先日、他県の保育団体の研修に参加する機会がありました。そこで今後の保育の話を研 修として聞いてきたのですが、そこに日本赤ちゃん学会の話がありました。日本赤ちゃん 学会とは、赤ちゃんを総合的にとらえ、医療、工学、心理学、社会学など多面的な視点か ら赤ちゃんを研究する学会です。その学会の理事長であり、同志社大学 赤ちゃん学研究 センター教授の小西行郎先生の話を聞くことができました。

 

これまでも巻頭言の中で脳科学の話を少し出していましたが、最近は医学の進歩や脳科 学の研究が進んだことによりさまざまな発見がされています。以前、昼寝のことでも書か せていただきましたが、人には生体リズムがあることが発見され、生体リズムがズレると ADHD(注意欠陥多動性障害)になる子どもが増えることが多くなると言われていることや MRI やエコーが鮮明に見えるようになったことで赤ちゃんの胎内での様子を細かく見れる ことができるようになり、赤ちゃんの「歩く」 「笑うなどの表情の練習」「身振り手ぶり」 などといった原始反射はもうすでに胎内で行われていることが見えてきました。それによ って「赤ちゃんは白紙で生まれてくる」ということは現在否定され、 「多様な能力を持っ た存在」とされています。つまり、大人が子どもによかれと思って「してあげる」という ことは余計なおせっかいであり、逆に子どものためではないといわれています。

 

では、大人はなにをしてあげればよいのでしょうか?なにができるのでしょうか?この 研修で言われたことは「いかに子どもを動かすか」ということでした。それは「指示して 動かす」 「導く」というものではなく、子どもが主体的に動くかということです。 赤ちゃんは生まれてから体を動かしますが大人のように考えて動いていません。では、な ぜ大人は思ったように体を動かせるのかというと「経験があるから」です。つまり、発達 のためには経験が必要になります。そして、経験するためには動かなければいけません。 「動くことで学ぶ」のです。そして、そこで起こる失敗をどう感じ、どう考えるかを試行 錯誤することで脳を作っていくのです。「動かされる」では考えません。「自ら動く」こと がより重要になってきます。なぜならば、受動的な経験は動きが伴わないからで、主体的 な活動だからこそ動きにつながるのです。

 

今、私たちは「見守る」ということを中心に考えています。それは子どもたちをどう動 かしていくかが大切になります。そのためには距離感が大切です。遠すぎても子ども放任 になります。近すぎても過保護になり子どもが受け身になり、動かなくなります。見守る ためには「こどもから求められたら、関わってあげる」くらいのほうがかえっていいと思 っています。必要とされないのに子どもの社会に入りすぎるのはよくありません。しかし 信頼できる大人との関係(愛着)がなければ子どもたちは自分から動きません。そして、 愛着とはこのように子どもが求めてきたときに、いつでも答えることのできる距離で見守 っていることだと思います。もちろん、喧嘩やケガをしそうなときに関わることもありま す。しかし、最後は子ども同士で解決できるようにもっていく必要があります。幼稚園で も日々子どもたちはたくさんのことを体験し、経験していますが社会の中で生きていくた めに必要とされる力をつけるために、大人ができることはなんなのか考える機会になりま した。