Number 14
投稿年月日 2016年3月3日
題名 中1ギャップ
内容 「中1ギャップ」とは小学校 から中学校に進学した際、環境の変化から気持ちの面や学校生活のギャップがおきる ことでショックを受けることを呼び、不登校やいじめの激化、非行の増加、ひきこもりが 起きることを言います。
投稿者 副園長 邨橋 智樹 

2016年3月号 中1ギャップ

巻頭言

先日、門真市魅力ある教育づくり審議会に傍聴者として、参加させていただきまし た。そこで「中1ギャップ」についての話がありました。「中1ギャップ」とは小学校 から中学校に進学した際、環境の変化から気持ちの面や学校生活のギャップがおきる ことでショックを受けることを呼び、不登校やいじめの激化、非行の増加、ひきこもりが 起きることを言います。そして、少なからず門真市でもこういったことが起きているそう です。最近では「小 1 プロブレム」ということもよく聞きます。幼稚園から小学校にあが ることで集団行動がとれない、先生の話を聞かない、座っていられない。こういった問題 が教育現場では起こっているそうです。

 

審議会の中では「中 1 ギャップ」については小学校と中学校の段差をどうなくしていく かという議論され、 「段差をなくす」ために中学校的な教育の仕方を小学校でも取り入れ ることが学校側から出ていましたが、ある民生委員のかたが「段差(ギャップ)は子ども の成長のためにもあってもいいのではないでしょうか?」という意見を出されました。私 もその意見には賛成です。大切なのは「段差があるから教育の先取りをして段差をなくし ていこう」というのではなく「いかに段差を乗り越えられる子どもたちを育てていくか」 ということを話すことが大切だと思います。これは「中1ギャップ」だけではなく、「小 1 プロブレム」にも同様に言えることです。こういった「段差をなくす」環境を作っていく ことで、かえって子どもたちが越えることができる力を奪っているのかもしれません。

 

世界機関である OECD(経済開発協力機構)では小 1 プロブレムでの乳幼児教育と児童教育 との連携について次のような問題点に原因があるとしています。 「歴史的に幼児プログラ ムと学校教育は別々に展開してきた。管理・資金の流れ・職員研修のシステムが異なって いた。小学校教育は(幼児プログラムに比べて)古くて強力な制度であり、19 世紀末まで には多くの国々で国家の中に組み込まれている。乳幼児制度はその展開が(小学校教育制 度より)ゆるやかである」と書かれてあり、幼児教育はかつて母親あるいは家族全体の養 護が中心を占めていたが、最近新しく議論され、新しい乳幼児の制度を確立しようとい う、新しい時代に即した考え方や取り組みを導入しているのに対して、小学校教育は古 く、それを改革しようとしても非常に強力であるためになかなかできず、そのギャップが 子どもにしわ寄せとして出ていると考えています。このような OECD の見解によると、小 1 プロブレムはより古い考え方の小学校教育を行っている国に多く見られるということで、 日本のほか韓国でもその問題を抱えているそうです。

 

私は子どもたちの成長発達の過程はその時期ごとに大切なことがあると考えています。 つまり、子どもたちの教育について先取りすることはかえって危険なことであるように思 います。そして、その「先取り」は多くは大人からであり、子どもからではないことが多 いように思います。 「選択制」で保育をしていても、よく「小学校にいったら困りません か?」と聞かれることがありますが、 「小学校の授業を受ける力をつけるために乳幼児教 育があり、それは小学校の先取りをして座らせることや授業のようなことをすることはな い」と考えています。それよりも今、「やりたいことができる」といった経験が多いほう が意欲や探求心がつき、先の小学校という環境にも適応できるようになると思います。ど んな環境でも乗り越えていけるような子どもたちを育てていきたいですね。