Number | 21 |
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投稿年月日 | 2016年10月10日 |
題名 | 運動会 |
内容 | そもそも運動会とはどこから始まったのでしょうか。 |
投稿者 | 副園長 邨橋 智樹 |
10 月になると、いよいよ運動会が近づいてきます。最近では組体操がさまざまな論争を呼んでいま
すが、では、そもそも運動会とはどこから始まったのでしょうか。
運動会の始まりは 1874 年海軍兵学校で、イギリス人ストレンジという東京大学予備門の英語教師
が、教官指導のもと行った「競闘遊戯会」が初めて人に見せる運動会と言われています。しかし、
それがすぐに小学校の運動会に変わっていったのではないようです。はじまりは初代文部大臣 森
有礼が、体育の集団訓練を進めるため、学校で運動会を行うように指導したことからはじまります。
そして、 「体操伝習所」という体育研究機関が 1878 年に設立され、坪井玄道が、戸外遊戯の体育的
な価値を認識し、体操と併用すべきことを唱え 21 種目を解説した「戸外遊戯法」を著したりする
ことなどから、現在の運動会に近くなってきます。
そして、実際に運動会が定着したのは、戦争がはじまったころで、 「軍事教練」の一環として、心身
の鍛錬としてだけでなく、戦時下の軍国主義的な思想を具体的に教育活動に浸透させるために行わ
れることで広がってきます。そのため、練習も訓練として位置づけられ、練習はきつくすることで
心身を鍛えるという意味合いをもつようになり、種目も相手を打ち負かし戦う気持ちを鼓舞するこ
とや勇敢に戦うということが重視されました。また、実際の戦争体験もするようにと「騎馬戦」や
「棒倒し」といった戦闘的な種目が好まれ、紅白対抗という対戦型の勝敗ルールを前提とした形が
定番となっていきます。また、運動会でよくみられる体操やマスゲーム、ダンスなど集団で演技す
る種目は集団行動の訓練になっています。ですから、現在も運動会前に多くの練習を費やすのは、
この集団での演技とか、集団行動が必要な種目が多いからです。そして、その目的は、演技自体で
はなく、皆そろうことが目的の一つなのです。こうやって見ていくと現在の運動会の歴史には戦争
やそのための訓練といった意味合いが元々にあるのですね。
また、日本の乳幼児教育は、小学校教育から大きな影響を受けているところがあります。
本来、幼児教育の「運動会」では幼稚園教育要領や保育所保育指針、認定こども園保育要領にある
「健康」の領域が中心であり、他児との関わりや主体的な活動の必要性を中心としなければいけま
せん。これに対し小学校における「運動会」は「体育」という教科の習得を保護者に披露すること
にあります。そのため運動会を通して健康領域を体験させるという意図と運動会を体育の授業の一
環として位置づけるのとはずいぶんと違うはずです。しかし、どうしても幼稚園や保育園で行われ
る運動会は小学校の運動会のミニチュア版になっているところがあります。
今回、幼稚園でも運動会の話をするにあたり、 「より発達が見えるような運動会」に変えていこうと
いうことを職員の先生方と話しています。そこには訓練や出来の成果ではなく、ありのままの子ど
もたちの発達や姿、楽しんでいる様子、頑張っている様子などありのままの子どもたちの姿を見て もらえるようにしていきたいと考えています。
2016年10月10日