Number 22
投稿年月日 2016年11月3日
題名 子どもの権利条約
内容 その一つに「教育システムへの懸念」というものがあります。
投稿者 副園長 邨橋 智樹 

2016年11月号 子どもの権利条約

巻頭言

先日、門真市の市役所の方々と保育の話をする機会が幼稚園でありました。そして、その後幼稚園
での研修があったのですが、そのどちらでも取り上げられた内容の中で「子どもの権利条約」とい
うものが出てきました。

 

この「子どもの権利条約」は子どもの基本的人権を国際的に保障するために定められた条約であり、
18 歳未満を「児童(子ども)」と定義し、国際人権規約(第 21 回国連総会で採択・1976 年発効)が
定める基本的人権を前文と本文 54 条でまとめたもので、子どもの生存、発達、保護、参加という全
体的な権利を実現・確保するために必要な項目を決めており、1989 年の第 44 回国連総会で採択さ
れ、1990 年に発行されました。そして、日本は 1994 年に「批准」しています。この「批准」という
言葉ですが、「やりましょう」という内容ではなく、 「法律までも見直し、内容に沿って行う」とい
った内容で、日本は世界に対してこの子どもの権利条約を行うということを発表しています。しか
し、これまで日本は国連からこの子どもの権利条約で何度か勧告(忠告)を受けています。その勧
告うけた項目はいくつかありますが、その一つに「教育システムへの懸念」というものがあります。

 

その内容がどういったものかというと「日本の教育システムがあまりに競争的なために、子どもた
ちから、遊ぶ時間や、体を動かす時間やゆっくり休む時間を奪い、子どもたちが強いストレスを感
じていること、それが子どもたちに発達上のゆがみを与え、子どもたちのからだや精神の健康に悪
影響を与えている」といったことが指摘され、適切な処置をとるように勧告されています。

 

そして、 「自殺やいじめ・ひきこもりといった子どもたちの問題が多いことも、教育のシステムの生
み出すストレスと関係があるのではないか」と指摘され適切な対応をとることを勧告されました。
またこの「適切な対応」ですが、それには「登校を強制したり、施設にいれたりするというような、
子どもを学校に適応させるための対応」ではなく、学校や教育システム自体を子どものニーズに合
うように変えていくことであると考えられます。

 

ここでは「学校」が対象に書かれていますが、子どもの権利条約は「児童」でありそこに乳幼児期
の子どもたちも入ってきます。現在、幼稚園でも「選択性」や「異年齢」をしているのは子どもた
ちが自分の発達課題にあったものを選べることや自分で考えることなどを通して、子どもの主体的
な活動ができるように考えています。そこには子どもの権利条約の「意見の表明権」がある。とい
うことを考えると主体的な活動が大切であると思っています。

 

こういったことを知っていくと改めて子どもたちの教育とはどういったことが必要なのかと考えてしまいますし、教育の意図にある「生きる力」や「人格形成」といった部分を保育としてどう達成できるのか、また、そのための環境づくりを今後も考えていきたいと考えています。