Number 30
投稿年月日 2017年7月3日
題名 危険回避と脳
内容 危険を察知し、回避することは脳によって判断されます。そもそも危険回避能力など危険を予知することは「脳幹」で感じます。そして、主に視覚から入った情報が視覚野、後頭葉で認知し、「反射神経」として回避することが可能になります。
投稿者 副園長 邨橋 智樹 

2017年7月号 危険回避と脳

巻頭言

数年前から脳の「前頭葉」の働きが注目を浴びています。

 

脳のこの部分は人間しか 持っておらず、人間しかできないものを司っていると言われています。それは「コミュニケーション能力」や「問題解決能力」などのこれからの時代の「学力」と言われる力や、 「創造力」や「思考力」といったこれまでも必要とされた力に関係すると言わ れています。

 

また、数年前から問題視されている「キレる子」の原因である「行動抑制力」も関係しています。そのため、脳を育てることはとても重要なことです。ま た、キレる子どもだけでなく、最近の事件や子どもに関する問題は脳の機能の低下によるものも多いでようです。

 

危険を察知し、回避することは脳によって判断されます。そもそも危険回避能力など危険を予知することは「脳幹」で感じます。そして、主に視覚から入った情報が視覚野、後頭葉で認知し、「反射神経」として回避することが可能になります。しかし、 脳の機能が低下しているとこの反射神経も衰え、思わぬ事故やケガを負うことになり ます。

 

これらの反射的な本能は、脳幹や視床下部など本能に関わる脳部が働くのです が、最近の子どもたちを中心にこの脳の部分が低下していると言われています。

 

また、視覚や聴覚、味覚など五感から危険を感じることにも脳は大きく関係しており、五感などを通して伝わった危険情報は前頭葉で判断し、瞬時に回避しようとする 行動を起こします。そのため、前頭葉が子どものころから衰えていると正しい判断、 決定が行えません。

 

しかし、逆を言えば、危険を自ら回避する経験は、脳の前頭葉を育てることにもつながります。そのため危ないからといって、先に危険を取り除いてしまうと、前頭葉が衰え、自らの危険回避能力が低下していきます。そして、それだけではなく、前頭葉は初めにも書いたように学力の低下にまで影響してくるのです。

 

だからといって、けがをしてもいいわけでもなく、事故をすることがいいわけでも ありません。ましてや、「ほったらかし」ていいわけでもありません。大切なのは「子 どもたちがけがをしない能力をつける」ことが大切であり、その環境を作ることが必 要なのです。

 

それは子どもが主体的に生活し、自発的に遊び込めるような空間が必要とされてきます。しかも、それができるような環境をすべて用意するのではなく、子ども自ら生み出していくような余地も残しつつです。そして、子どもは大人から監視されることがなく、しかし、大人たちから温かく見守られている目を感じながら、自 分たちで工夫し、異年齢で刺激し合いながら自由に遊ぶことが必要です。

 

幼稚園でも子どもたちは日々の生活の中で怪我をします。保護者の方々にはいつも心配をおかけしています。

 

ですが、子どもたちが活動を通して自己発揮し、経験する中で発達や成長遂げれることで、より脳を育て、これからの社会につながる力を育むことができる環境を整えていきたいと職員一同考えています。

 

そして、子どもたちの本来の力や能力ができるよう育ちを見通して、見守っていきたいと考えています。