Number 33
投稿年月日 2017年10月5日
題名 保育の質
内容 世田谷では 0 歳~5 歳の小学校就学前児童が毎年 1000 人ずつほど増えています。自治体としてはうれしい反面、「待機児童」は多くなっており、待機児への対応が最優先課題になっています
投稿者 副園長 邨橋 智樹 

2017年10月号 保育の質

巻頭言

前回、保育の質についての話を巻頭言に書かせていただきましたが、全国の自治体などでも「保育の質」についての議論がなされています。その中で世田谷区は非常に興味深い活動を行っています。世田谷では 0 歳~5 歳の小学校就学前児童が毎年 1000 人ずつほど増えています。自治体としてはうれしい反面、「待機児童」は多くなっており、待機児への対応が最優先課題になっています。

そんな中、世田谷では「数〈施設の量〉 」の拡充だけではなく、 「子どもを中心とした保育」の実現を目指して「保育の質」を改めて考えていくことを始めています。その中で平成 27 年 3 月に「世田谷区保育の質ガイドライン」を作成し、行政や保育所の運営者だけではなく、保護者や地域の方々にも配布し保育の質について、区民全体で共有しながらより良い保育の実践に取り組みを進めているそうです。 参考(http://www.city.setagaya.lg.jp/kurashi/103/129/1812/d00152282.html)

この保育の質ガイドラインは漫画も交えながら説明してるのでとても読みやすく書かれています。その漫画の中に「保育園って、ただ遊んでるだけ」と思っている保護者に対して、園長先生が言っている言葉はとても興味深いです。

 

そこでは遊んでいる子どもたちを指さして「興味を持つ力、探求する力、人と協調する力、最後までやり抜く力・・・これらは人が生きていくのに必要な「底力」です。それが育っていないと学校の勉強も仕事もうまくいかない。園はそういう力を育てているのんですよ」と言っています。園が子どもたちに一方的に伝える活動が本当にいいことなのか、それよりも子どもたちが自分たちで行う活動の中にこそ、大きな意味があるということが語られています。

また、別の章では「子どもの最善の利益」についての記述もありました。

 

昨年の巻頭言にも書いた「子どもの権利条約」の話がここでは話されていました。その文面には「子どもたちが育つ場である保育園では、この子どもの権利条約に則って、すべての子どもの健やかな成長が保障され、命が守らなければなりません。子どもたちが自分の思うところを思うように発し、それをしっかりと聞いてもらえる環境設定を子どもに関わる全ての大人が力を尽くしていかなければなりません」とあります。

そして、そこには無理強いをしないことで食べたい意欲を育てることや男女の差で活動を変えないことなどの大切さが書かれてあります。日本はまだまだ子どもの参加する権利(意見の表明権)における意識が薄いことで国連にも勧告を受けていますが、それについてもしっかりと意識していることがうかがえます。

実際にこの保育の内容は保育園が中心になっている内容でしたが、今度の幼稚園教育要領と保育所保育指針の改定で保育における内容は同じになってきています。

 

それほど、保育の質が求められる現在、世田谷区の活動は保育の質をとらえ考えていくために非常に大切な取り組みをしてくれていると感じます。全国がこういった保育の質に関して目を向けていく中で、自園でもどう取り組み、子どもたちの最善の利益を与えられる保育が実現できるかを考え、保育を進めていきたいと思います。