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2021年5月 支援

巻頭言

今年度も入園式、始業式からあっという間に一カ月がたちました。今年は去年度と比べ、少し子どもが少なくなってくる中でのスタートとなります。門真市自体に子どもが少なくなってきており、近隣の幼稚園でも定員割れが起きているという話があります。私どものような乳幼児が生活する幼稚園や保育園としては何とも残念な話ですが、私は逆に考えることもあります。それは子どもが少ないからこそ、思い切っていろんなことができるのではないかと考えています。人数が多かったからこそ、できなかったこともあるのではないかと思うのです。

 

これからの社会は、より多様で発想力が求められる時代になってきます。それと同時にこれまで当たり前であった教育の形や保育の理論も変わってきています。これまでは赤ちゃんは白紙で生まれてきて、母親との生活の中で色彩豊かに白紙に色が付けられているといういわゆる「白紙論」が唱えられていましたが、最近では赤ちゃんはシナプスが一番多い状態で生まれてきて、それをうまく「刈り込んでいく」ということが脳科学の進化によってわかってきました。赤ちゃんは一見受動的に大人からのシグナルを待っているように思いますが、見方を変えれば、泣き声によって大人を動かしているという見方もできます。問題はそこで大人が答えてあげれているかどうかなのです。赤ちゃん学会の故 小西郁郎先生は以前研修で「人間は細胞を動かして生きています。保育も一緒で子ども自身が細胞を動かすことが保育なのです。誰かから動かされるというのは保育ではありません」とおっしゃられていました。

 

また、最近では「非認知能力」が保育の世界ではホットな話題です。その中でも「実行機能」という「目標を達成するために自分の欲求や考えをコントロールする力」が重要だと言われています。いくら勉強ができても、自分をコントロールできなければ宝の持ち腐れになるのです。そして、この実行機能が育たない、又は壊されてしまう原因となるのが「ストレス」であると言われています。子どもたちに我慢させるためにストレスを掛けるのはかえって我慢する力や自分をコントロールする力を失わせるのです。逆に実行機能を育てるためには支配ではなく「支援」が必要であると言われています。

 

今、たちばな幼稚園では異年齢や選択をすることを大切にしています。それは子どもたちが自分でモデルを見つけ、自ら学ぼうとする力を育てるための環境を目的としています。そして、大人の温かく応答的な関わりを通し、子ども自らの生きる力を育てるということを念頭に置いて、保育を進めています。子どもたちの主体的な活動こそが、将来に向かうための力になるということは保育を見ていると常々感じます。