Number 23
投稿年月日 2016年12月5日
題名 韓国の保育を見て
内容 現在韓国は日本に匹敵するほどの少子化が進んでいます。 そのため、各園での対策だけではなく、国をあげて幼児教育の大切さが議論されてきました。
投稿者 副園長 邨橋 智樹 

2016年12月号 韓国の保育を見て

巻頭言

先日、韓国の保育園を見学してきました。現在韓国は日本に匹敵するほどの少子化が進んでいます。
そのため、各園での対策だけではなく、国をあげて幼児教育の大切さが議論されてきました。そこで幼
児教育に関する法令の改正により、質の高い幼児教育環境を目指すことが進められています。また、少
子化の一方で女性の社会進出が進み、長時間保育の要望も多くなっています。そのほかにも保護者が保
育施設を選べるかといったことや、乳幼児の発達に合わせた適切な保育の提供など、多様な問題が指摘
され、OECD(経済協力開発機構)の勧告により、一元化が課題として浮上しています。

世界的に見ても一元化というのは日本だけではなく、各国で行われている教育の流れなのだというこ
とが分かります。韓国は学歴社会が強く、詰込み型の教育が進められているイメージがあります。実際、
韓国の少子社会の現状は受験などの競争が激しく、 「少なく生んで、上手に育てる」という考えが一般
化しているようです。しかし、この「上手に」ということが問題です。多くは「自分の子どもを誰より
も賢く育てたい」という親の要望が強く、英語学習、中国語学習や過度の商業主義による様々な早期教
育が行われているそうです。

そんな中、今回の見学では韓国の中でも「質の高い」と言われる保育園を見学してきました。てっき
り、こういった社会の中にある園ということで、 「質の高さ」といっても、詰込み型の保育なのかなと
思っていました。しかし、実際は「自発性」を中心とした環境で、標準教育課程(乳児の共通保育課程)
とヌリ課程(幼児の共通保育課程)というカリキュラムを中心とした保育でした。また、その環境は現
在、たちばな幼稚園でも行っているような「選択できる環境」でした。また、韓国では「年齢別」保育
が中心です。そこで、 「異年齢」のことを尋ねると「異年齢の良さや理念、意図は十分に理解している」
と言われ、今後はその方向に変わっていくことを示唆していました。まだまだ、すべての保育園が変わ
ってきているわけではないですが、質の高い保育というのは一貫して、主体性を中心としており、 「選
択できる」 「オープンな環境で模倣できる」という環境は全世界共通であるように思います。このこと
は韓国だけではなく、ドイツやオランダなど世界中ではあたりまえになってきています。

今回、韓国の質の高いといわれる保育機関に見学に行ったのは、韓国が良いのではなく、どのような
ことが「質が高い」といわれるのかを知るためです。「質」とはなんなのでしょうか?いい大学にはい
ることでしょうか。高所得者になることでしょうか。それは必ずしも幸せな人生を送る要素ではありま
せん。そうなることが偉いわけでもありません。また、早期教育を熱心にしていても短期的には意味が
ありますが、長期的には意味がなく、かえって小学校に行ってから学業成績が下がってしまうこともわ
かっています。韓国を見学に行ったのは少なからず、幼児から競争を目指しているのではないかと考え
たからです。しかし、見学を通して「質の高い」保育をしている保育園ではかえって、子どもたちの自
発性や主体性を大切にする保育を進めていました。今、たちばな幼稚園も子ども園化にともない保育が
変わってきていますが、子どもたちにとっての「保育の質」というものをしっかりと考えていきたいと
職員一同考えています。そして、保護者の方と連携しながら「ありのままの」子どもたちの成長や発達
を共有し、成長を見守っていけるようにしていきたいと思っています。