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9月巻頭言 人前

園からのお知らせ

九月に入り、いよいよ二学期が始まりました。二学期は運動会や発表会など、人前に立つ大きな行事が続く学期です。毎年のように、子どもたちの姿を見ていると、本番になると緊張して人前に出られなくなる子が少なからずいます。幼稚園としては、そのような姿も成長の一場面として微笑ましく見守っていますが、保護者の方によっては心配されることもあるでしょう。

 

では、なぜ「人前に出られる子」と「出にくい子」がいるのでしょうか。そもそも人前に出るとは、「自分が注目される」「評価される」状況を意味します。つまり、人の目を意識し、その中で自分を表現しなければなりません。そのためには、注目や評価に耐えられる力が必要です。その背景には、自己肯定感やコミュニケーション力、不安やプレッシャーに向き合う力が関係しています。

 

多くの子どもたちが感じるのは「失敗への不安」「否定的な評価を受けるのではないか」といった思いです。「うまくやらなきゃ」と意識すればするほど緊張してしまいます。しかし一方で、この感覚は「他者を意識できる感受性の豊かさ」とも言えます。人前に出られない子は、他と自分をしっかり区別し、強い自己意識を持っている証拠でもあるのです。加えて、自信のなさや「自分はできない」という低い自己評価が、人前に出ることを難しくしてしまうこともあります。

 

整理すると、人前に出られない大きな要因は「不安感」であり、それを支える背景として「他者を強く意識する自己意識」と「自己肯定感の低さ」があります。こうした心理状態を強めるものとして、過度に厳格な環境や否定的な言葉がけ、過去の失敗体験やからかいの経験などが挙げられます。また、生まれ持った性格的要素として内向的であったり、感受性が高い子どもも、より強いストレスを感じやすい傾向があります。子どもたちは表面に見えなくても、心の中でたくさんの思いを抱えているのです。

 

だからこそ大切なのは、子どもたちの頑張りを否定したり、他の子と比べるのではなく、ありのままを受け止めることです。小さな成功体験を一緒に喜び、安心できる環境を用意すること。さらに当日の姿だけでなく、そこに至る努力や挑戦の過程に価値を見出してあげることが、子どもたちの自信へとつながります。

 

幼稚園としても、行事は子どもたちの成長を共有する大切な機会だと考えています。子どもたちの姿をそのまま受け止め、寄り添いながら保護者の皆さまと共に見守っていける環境を目指しています。そして、不安そうな子どもがいれば、そっと寄り添い、安心を与えられるよう日頃から関係を築いていきたいと思います。二学期、子どもたちの豊かな姿を皆さまと共に楽しみ、喜べることを願っています。