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先日、全国の保育大会の自主シンポジウムで話題提供者として発表してきました。その内容は「実行機能を育む保育実践」という内容で、私は「幼児期のごっこ遊びから見る実行機能」という内容で話をさせていただきました。この「実行機能」というのは「子どもが自主的に目標を達成するために自分をコントロールする力です。」これからの社会においては、おそらくこれまでとは大きく違った社会構造になってくるということがたびたび言われています。そして、これまであった仕事は無くなり、新しい仕事を模索し、その仕事を作ることも必要になってきます。新しいことを始めるということは当然、様々な苦難も待っています。そういった苦難を越えるための「粘り強く立ち向かう力」が必要になってきます。そこで実行機能という能力に注目が集まっています。
武蔵野大学で、発達心理学や発達科学を研究されている今福理博さんは自分をコントロールする自己制御についてこう言っています。「自己制御は将来の成功や健康につながる重要な能力です。」そして、さらに「どうやらごっこ遊びをすると自己制御の一部が促進されるようだ」と言っています。ごっこ遊びの中には自分をコントロールするための力につながる遊びでもあるのです。では、なぜごっこ遊びなのかというと今福さんは「自己制御の発達を促しているのは、私は子ども同士、集団で遊ぶものと、1人で遊ぶものとの差ではないかと思っている」といっています。ごっこ遊びや演劇遊びは子どもの集団が必要です。集団の中で、1つのものを作り上げるには個々の思いと集団の思いを両立させなければいけません。その際、一人の思いを抑制することが必要になってきます。そのため、その時の条件として共感力が必要になってくるのです。だからこそ、折り合いをつけないと遊びが楽しくならないごっこ遊びは格好の活動だというのです。
保育学会での発表では幼児のチームで子ども同士が「美容院ごっこ」をしている様子を紹介しました。初めはままごとゾーンで、年長児がシンクの遊具を使って、子どもが頭を洗っていたところから始まります。その様子から、先生が鏡を用意したり、ヘアカタログを用意するとその遊びは広がっていきました。髪を切る人、頭を洗う人、頭を洗われる人、それぞれが役割を決めて遊んでいました。次にその様子を見ていた年中児が、髪を切る年長児に何かを話す様子が見えます。どうやら仲間に入れてほしいようで、年長児は年中児に「じゃ、髪の毛を切りに来た人を案内する役ね」と役割を用意します。役割をもらった年中児は飛び跳ねて喜んで、その役をしていました。
この子どもたちの一連やり取りこそ、まさに実行機能を養う環境であり、そこで起きているやり取りには様々な学びの土台につながる環境があるということを感じました。また、このやりとりはあくまで子どもたちだけで行われており、先生は子どもたちの遊んでいる様子を観察し、より遊びが広がるであろう環境を作っていました。実行機能や自己制御はあくまで「自主的関わり」が必要であり、自主性を育む環境を用意することが重要になってきます。つい保育というと大人が投げかける活動に目が行きます。確かにその活動も重要です。しかし、子どもたちの「ただ遊んでいる」様子の中には様々な「学び」があるということが、子どもの様子を整理して見ていくことでその重要性をより改めて強く感じます。
2021年6月14日