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海外からの訪問者

副園長のコラム

少し前の話ですが、5月の末に韓国の方々が30名ほど見学に来られました。私が以前、藤森メソッド(見守る保育)の創始者である藤森先生たちと韓国に保育見学に行った時に通訳兼コーディネータであった方の紹介で昨年も同じくらいの規模で見学に来られたのですが、今年も同じようなつながりでの見学になります。

 

現在韓国は少子化が進み、2024年の合計特殊出生率は0.72と日本と比べかなり厳しい数値になっています。そのうえ、かなり厳しい受験戦争が起きており、受験会場にパトカーで送ってもらうといったニュースを覚えている人も多いのではないでしょうか。

 

私が5年ほど前に韓国に見学に行ったときには乳幼児教育が変わろうとしていた時期でした。「ヌリカリキュラム」というのが始まっています。「ヌリ」というのは「世の中」という意味で、全人教育と創造性育成を柱とした幼保一体型カリキュラムです。また、韓国の義務教育は日本と同じ、小中学校の9年間ですが、ヌリカリキュラムが始まったことにより、幼児期(3~5歳)を含めた実質12年間になっています。また、韓国も日本の幼稚園にあたるものと0歳児から預かる保育園のようなオリニジップといわれる施設があり、現在3歳児以降はヌリカリキュラムを行うのは幼稚園においてもオリニジップにおいても、どちらの機関でも同様に行われます。

 

そんな韓国でしたが、かなり子ども主体の保育に変えていこうとしているように感じましたが、プロジェクト的に保育を行っている様子を見ても、まだまだ子どもたちが選ぶという事よりは大人が誘導しているように見えました。ただ、あくまで私が見学したのが2016年なので、今は元進んでいるかもしれません。また、驚いたのが、保育を変えるにあたっての変化の早さでした。国をあげて保育の改革を行う際、資金もかなり子どもに充てられています。あっという間にカリキュラムの変化と環境の変化が為されていたことに驚きます。しかし、その際にも課題はあるらしく、この2016年の見学に関して言うと、カリキュラムがしっかりとしている分、保育士の質が問われなくなっていると言っています。「それ通りにやる」といったように「こなす」ことが目的になりがちになっていたようです。目の前の子どもに合ったことをするのではなく、「やらなければいけないことをする」というのであれば、もしかしたら、先の保育は人間でなくともできてしまうかもしれません。必要なことはカリキュラムによって子どもを育てるのではなく、社会を育てるという事を中心に子どもを育てるということです。それは少子化が進んだ韓国においては非常に重要な意味があるとも言っていました。そのため、注目されたのが、今幼稚園で進めている「見守る保育」です。2016年の見学のメンバーも全国の藤森メソッド(見守る保育)を行っている園の先生方たちでした。

 

そして、そのつながりをもとに、日本に保育の見学に来る際、大阪で藤森メソッド(見守る保育)を行っている園を見たいということで、たちばな幼稚園に見学に来てくれました。どの国においても、子どもをどう育てることが必要なのかと考えることは国を挙げて考えられていることが伺えます。日本と韓国はいま政治においてはあまりいい関係とは言えませんが、見学に来てくれているというのはありがたいことです。見学に来られた韓国の方々は幼稚園の環境や考え方、理念を熱心に聞いてくれました。質問も様々でしたが、保育の目指すべきところを聞かれ、答える中で共感されることも多々ありました。

 

願わくば、これからの社会において、隣国とはいい関係でいたいものです。7月の巻頭言にも書いたのですが、韓国の方々に「「未来を生きる子どもたちに『どういった社会を残していくか』ということをよく言いますし、それも大切なことですが、それ以上に『未来を作る力』を育てていくことも必要ではないか」という言葉を話すと、韓国の方々も共感してくれました。どの国でも子どもたちの事を考えていない国はないと思いますが、何のために行うかということはしっかりと捉えていかなければいけません。