Number 4
投稿年月日 2015年5月5日
題名 食べる
内容 どういったことをすることで子どもたちの食事の機能を発達させることができるのでし ょうか。
投稿者 副園長 邨橋 智樹 

2015年5月号 食べる

巻頭言

子どもたちは幼稚園で生活をしていく中で、様々な機能を発達させていきます。 「食べる」
ということもその一つですね。始めは離乳食を食べていた赤ちゃんも、中期食・後期食・完了
食というようにステップをふんで、大人と同じような大きさのものも食べることができるよ
うになります。そして、保育の中ではしばしば、その食事をどう食べさせていくことが良いの
か、食べ方を教えるのか、食べる量をどうみていくのかなどが議論に上ることがあります。で
は、どういったことをすることで子どもたちの食事の機能を発達させることができるのでし ょうか。

 

そこで大切になってくるのが食事を「楽しく」食べることです。おいしそうに食べている人
と一緒に食事することや、おしゃべりしながら食べることも一つかもしれません。キャンプ や外で食べることでおいしく感じるのも楽しさがあるからだと思います。

 

この「楽しく」というのが食事において大切であり、食育講師の井上ききさんは「楽しく食
事をすることは消化機能にも大きく影響します。そういった環境の中では消化も順調に行わ
れやすく、吸収も良い。それらの機能が十分に働いていると、今の身体に必要な栄養素を効率
よく吸収できます」と言います。一方「緊張状態や悲しい食事は内臓の機能が萎縮して十分に
働いていません。消化不良や下痢・便秘になり、仮に食べても栄養になりにくく栄養失調状態
になることもあります。」せっかく食事をしたのに栄養にならないというのは驚きです。また、
こうも言います。 「嫌いな野菜を無理に口に押し込んだり、怒って食べさせたりしても、子ど
もたちは自分をだめな人間と思い、食事が嫌いになってしまうことやお母さんとの信頼関係
も崩れてしまうこともあるかもしれません」と言います。それほど、食事をする環境は子ども たちの栄養だけではなく、心にまで影響が出てくるのです。

 

幼稚園では食事をどう楽しく食べることができるかということを考えています。それは先
生との関係だけではなく、隣にいるお友だちと気持ちを共有しながら食べることを大切にし
ています。また、子どもたちは食べる量は一定ではなく、個人差があります。子どもたちは自
分たちで食べる量を調整し、順調に成長をしていることは成長曲線を見ているとはっきりと 分ります。

 

日本歯科大学の田村准教授は「発達には原則があり、急いでも有利になることはありませ
ん。子ども自身の持てる力に合わせて、進めていけばよいということです」とおっしゃってい
ます。保育をしていても、子どもたちが本来持っている「生きる力」を信じ、発達を見守って いくことはとても大切なことであるというのを子どもの姿を見て、強く感じます。