Number 2
投稿年月日 2015年 2月 1日 
題名 真似し、学ぶ 2月号
内容 なぜ子どもたちはこういったことを真似しはじめるのでしょうか。
投稿者 副園長 邨橋 智樹 

2015年2月号 真似し、学ぶ

巻頭言

最近、つくし組の子どもたちの遊びを見ていると面白いことが行われていました。

それは男の子がブロックで作った鉄砲のような形のものを壁に押し当てて「ウィーン」とやってい
る様子でした。また、違う男の子と一緒にブロックのトンネルを作って、それをトントンと叩きながら「トンネル作っているの」と共働して遊んでいました。

おそらくこれは今、幼稚園が増改築をしている最中なので、工事の人の作業を模倣して遊んでいるのだと思われます。

子どもたちの遊びを見ているとこういった真似をする姿はよく見られます。ままごとでも赤
ちゃんの人形を寝かせ、その上に布をかけて寝かしつけている様子なども保育の中でよく見
られます。

では、なぜ子どもたちはこういったことを真似しはじめるのでしょうか。

最近の研究では子どもたちは模倣することで人間の知恵を学んでいると考えられていま
す。そして、ヒトというホモサピエンスがこれまで生き延びることができたのはそもそもこ
の模倣する力があったからとも言われています。真似をして人から学んでいけるように保育
者が声をかけることは保育の中でも多くあります。

近くにいる子を指さして「真似してごらん」というと、言われた子はまず指をさされた子をじっとみます。そして、その子のやっていることを真似してやってみるようになります。

何度も言葉を繰りかえし伝えるよりも、具体的にわかりやすいですし、ずっと短い期間でできるようになります。

まず真似るほうがより効率的に物事を学ぶことができます。

模倣はやってもらったことを他にやってあげるという役割交替といった姿で現れることも
あります。

例えば、お母さんに食べさせてもらっている赤ちゃんがスプーンにすくったものをお母さん側に差し出すようなことがあります。この行動はこれまでされていたことを相手にすることで相手の行動を理解しようとしている行動だとも言われています。ただ、真似しているのではなく、そこには子どもたちが日々の中で経験していることを実践し、人との関わりも学んでいるのです。

また、この模倣のプロセスはとても環境の影響を受けるといわれています。明和政子(京都
大学大学院教育学研究科准教授)は「チンパンジーもヒトも新生児期にはある程度の模倣能
力を持っているのに、ヒトだけが模倣能力をぐんと発達させていくのはなぜなのか?それは、
周囲の大人が無意識に子どもに模倣させるような育て方をしているからだと思います。」と言
っています。「模倣する」というのは人間の大きな特徴のようです。

 

そして、ヒトにとって模倣することはコミュニケーションを円滑に行うための手段であり、生きていくために欠かせないことなのです。

模倣はコミュニケーションをとる相手から始まります。

まず、身近なお母さんやお父さん、次第に兄弟、友だち、周りの大人へと広がり、思春期になるとスポーツ選手やイメージの中の理想の人物だったりします。

 

様々な人と出会い、真似したり真似されたりする経験の中で、ヒトは幅広い知識や技能を身につけ、心を発達させていきます。

つくし組の子どもたちは遊びの中から多くのことを学んでいるのですね。