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投稿年月日 | 2017年1月1日 |
題名 | 社会的流動性 |
内容 | 各国 は、社会的流動性を高め、あらゆる子どもが自分の能力を最大限活かす機会を得られ るように、安価で質の高い早期幼児教育・保育(early childhood education and care, ECEC)を提供する取り組みを強化するべきだ |
投稿者 | 副園長 邨橋 智樹 |
OECD(経済協力開発機構)は『OECD保育白書 2017 年版(Starting Strong 2017)』の中で「早期幼児教育・保育の改善で、より多くの子どもを成功させ社会的流 動性を高めることができる」ということを主張しています。そして、そこでは「各国 は、社会的流動性を高め、あらゆる子どもが自分の能力を最大限活かす機会を得られ るように、安価で質の高い早期幼児教育・保育(early childhood education and care, ECEC)を提供する取り組みを強化するべきだ」と言っています。
ここにある「社会的流動性」というものがこれからの社会では非常に重要なキーワー ドとしてあるということをOECDは言っているのですが、では、「社会的流動性」と はどういうことなのでしょうか?
一つの例はアメリカで 1960 年代に行われた「ペリー就学前教育プログラム」です。こ のプログラムでは、貧しい地区に生まれたアフリカ系住民の3~4歳の子どもたち に、質の高い就学前教育を提供したペリー幼稚園に通った子どもは、通わなかった子 どもに比べて「人生の成功者」になる確率が高いことがわかったのです。
つまり、た とえ貧しい家に生まれても、質の高い就学前教育を受けることができれば、高い学歴 を手にし、安定的な雇用を確保し、犯罪などに走ることが少ないということを示して いるのです。その結果を受けてアメリカ政府では、教育に投資をして、所得格差を埋 めようとしています。
しかし、世界銀行のブログでは南アフリカの教育の現状を見ると、単に政府からの投資だけでは、問題のほとんどは解決されていないことが分析されました。そして、どのようなところに、どのように投資するか長期的な視点で考えないと効果がないという主張をしています。つまり、貧困層と裕福層の格差が埋まることができない状態 で、「社会的流動性」が低いということになります。
また、このことを受けて「質の高い保育」ということも言われています。今年の9月に書いた巻頭言にも質の話を書かせていただきましたが、厚生労働省の「保育をめぐ る現状」という報告にすぐれているプリスクールの教育方法の特徴を分析した結果、「子ども主導の遊びや活動、子どもが中心で教師がつなぎ発展させる遊びや活動が多 い」という特徴があったそうです。
社会的流動性を高め、質の高い乳幼児教育をすることが子どもたちが豊かな人生を歩 むためには必要なのですね。そして、そのためには子どもたちが自立していく支援を 大人がしていかなければいけません。これから保育所保育指針・幼稚園教育要領・こ ども園保育教育要領の改訂がいよいよ 4 月より施行されます。
これからの時代、子ど もたちが社会に出るときには今とは大きく違った状況になるかもしれません。そんな ときに教育とはどうあるべきなのだろうか考え、
新年を迎えます。 今年もご協力と理解ありがとうございました。来年もよろしくお願いいたします。
2016年12月30日