Number 10
投稿年月日 2015年12月5日
題名 教える。教わる
内容 今の社会に改めて子ども同士の世界の大切さを改めて感じます。
投稿者 副園長 邨橋 智樹 

2015年12月号 教える。教わる

巻頭言

つくし組の子どもたちを見ていると、子ども同士がつながり、一緒に遊んでい ることが多くなってきました。子どもたち同士でおもちゃを貸し借りしたり、お互 いの遊びを見て真似をしたりすることがとても多いです。そして、そんな子どもた ちの姿を見るたびに、今の社会に改めて子ども同士の世界の大切さを改めて感じます。

 

つくし組では子どもたちの様子を見て、大人の距離感を考えていくように考えて います。それは先ほども述べた子ども同士の世界をできるだけ保障しようと思って いるからです。最近では少子化や核家族化など、子ども同士の環境がなくなってき ています。そのため、子どもたちは小さい頃から物事を大人から学ぶことが多くな ってきています。学校教育においても教師(大人)からの伝達が多くなっていま す。だからといって、大人から学ぶものが決して価値のないものかというとそうで はありません。それは大切なことです。しかし、乳幼児から児童期の発達過程を十 分に消化するには「友だちからものを学ぶことであり、友だちに自分のものを分か ち合うこと」が発達の重要要件であるといわれています。それは内容よりも量が大 切だと言われています。どれくらいのことを友だちから学んだか、どれくらい友だ ちに与えることができたかということが大切なのです。

 

しかし、「教える。教わる」という関係は優越感や劣等感に結び付けられかねま せん。現在の競争社会では親がわが子を他の子と比較してしまいかねないのです。 本来であれば能力の高い人に尊敬し、共感することが何よりも自分のためになるの ですが、嫉妬や羨望、敵意やその裏返しの劣等感を強く意識してしまう人が今の社 会では多いといいます。また、逆に自分自身が優れているときは健全な誇りや自信 ではなく、優越感を感じてしまうこともあります。

 

優越感や劣等感は程度の差こそあれ、必ず人が持っている感情であります。しか し、それが過度に強調されると育ちの中で「友だちに教える。友だちから教わる」 ということができなくなります。保育をしていると乳幼児期の子どもたちは子ども 同士で「共感」していることが非常によくわかります。そして、相手と自分が違う ということを理解することで自己を確立していくことにも繋がっているといわれて います。過度な優越感や劣等感はこれらのコミュニケーションにも影響を与えてし まうのです。

 

つくし組の子どもたちのような小さい子どもたちでも、おもちゃの使い方や直し 方、お集まりの時にそっと注意している様子を見ているとこういった「教える。教 わる。」機会というものが生活の中で子ども集団だと多くあるというのを感じま す。そして、職員もその様子を見てありのままの子どもの発達を見ながら、その中 で、どう子ども集団を保障していくか、その大切さを改めて感じます。