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投稿日時 | 2024年7月30日 |
最近、保育の内容を外で話す機会が増えていますが、その中でこれからの社会の変化について言及することがあります。おそらくこれからの社会ではAI(人工知能)の発展によって仕事がヒトから機械へと代替されていくだろうという事や労働人口の減少と共に海外の移民の受け入れを日本は行っていくだろうと言われています。そのため保育をするにあたって、子どもたちがつけていかなければいけない力はこれまでとは違った能力になるという話しをしています。こういったことに対して幼稚園や保育園といった乳幼児施設が担うべき責任は多大にあると思うのですが、一方で日本の在園している子どもたちはあまりにも長い時間施設にいる現状も考えものだと思っています。子どもによっては平日家庭で保護者と関わる時間よりも、施設に居る時間の方が長い子どもがたくさんいますし、年々増えているように感じます。
「保育園を考える親の会」の普光院亜紀さんの著者「不適切保育はなぜ起こるのか」にはこの事について書かれています。それには日本は前述のように長い時間保育を受ける子どもたちが多数おり、海外のデータと比べても日本ほど長時間保育が普及している国はないそうです。これは各国の労働時間に大きく影響しているのは言うまでもありませんが、女性の出産後も働き続けることが出来る社会に変化していくにあたって保育制度が変わっています。しかし、これによって保育施設に保育現場に弊害が起きています。それは保育施設の延長保育(預かり保育)が当たり前になるということは保育士自身の仕事と子育ての両立が難しくなっているということが言えます。実際、妊娠を機に仕事をやめてしまうという保育士は相当な割合に上ります。また、一度やめた保育士が再就職する際も、延長保育のためローテーション勤務がある正規雇用を避けて、パートでの勤務を希望する人が多くなっている実態があります。これは私も実際の感覚として感じます。結果、ある園では「正規雇用の職員は若く、ベテランがパート職員ばかりという逆転現象になっている」という状態の園も少なくありません。
普光院氏は働く女性の増加に伴い育児に関して保育制度の変化が行われてきましたが、変わらなければいけないのは乳幼児施設だけではないと言っています。それは「父親の働き方」です。日本は未だ「女性の『内助の功』を前提とした男性の『滅私奉公的な働き方』が標準とされた昭和の時代の痕跡はいまだに根深く残っている」と言っています。確かに、これは未だに多いのではないでしょうか。「母親が育児を担う」というのは未だに強い文化としてあるように思います。
これらの課題によって延長保育がますます求められ、保育士不足の解決においても影を落とします。延長保育を担う職員の負担が増え、人材確保においてもなかなか難しい状況といえます。保護者の働き方は、保育園の運営に直接影響を与えていると普光院氏は著書に書いています。
私は少子社会において、赤ちゃんの時代からでも様々なモデルに出会うことが出来るという意味で、乳幼児教育を受けることには賛成です。しかし、今の日本のようにあまりにも長い時間、子どもたちが幼稚園に滞在するということには疑問を感じます。社会と子どもの生活について社会全体で子育ての現状を理解し、子どもたちが育つ環境にとってより良い社会になるように労働と子育て、そしてそれらを支えられる社会とのバランスがとられる世の中になっていかなければいけないのだろうと思います。それは「誰が得をする」「損をする」というのではなく、お互いが支え合うような思いやりのある世の中になっていくことが重要なのでしょうね。
2024年7月25日