Number 17
投稿年月日 2016年6月3日
題名 昼寝
内容 。睡眠の研究は他にも数多くの研究がされ ているのですが、特に幼稚園や保育園に大きく関わるのが昼寝です。
投稿者 副園長 邨橋 智樹 

2016年6月号 昼寝

巻頭言

最近では脳科学を始めさまざまな分野で睡眠というものの研究がされています。例 えば、OECD(世界経済協力機構)の調査では出生率が高い国ほど睡眠時間が長 い傾向があるということがあるそうです。睡眠の研究は他にも数多くの研究がされ ているのですが、特に幼稚園や保育園に大きく関わるのが昼寝です。

 

先日、日本赤ちゃん学会の第十六回学術集会に参加してきました。そこでは発達科 学、医学、工学、教育学といった基礎的な学問から政策、保育、育児の現場まで、 様々な分野からの研究を発表とする場所として開催されている学会です。

そこで今回語られていた内容の一つとして「機能リズムとしての時間、その発達と 障害」という内容がありました。そこでは【自閉症スペクトラム症/障害】と生活リ ズムについての関係です。何やら難しい内容ですね。つまりは【自閉症スペクトラ ム症/障害】は生体リズムに問題があるのではないかという研究です。その中でも、 生体リズムの中の「睡眠」というものに焦点が当たっていました。

 

そもそも昼寝がなぜ人にとって必要なのかというのは、人に備わっている「サー カ・セメンディアンリズム」という半日リズムと呼ばれる生体リズムによっておこ るものだからです。そして、そのリズムが起きるのが 12 時~15 時までの間が一般的 だったようです。だから、お昼ご飯の後は眠たくなるのですね。しかし、最近はど うもそのリズムが崩れているようです。その現状について考えるべきであると子ど もの睡眠と発達医療センター所長である三池輝久氏は警告しています。「子どもたち の生活が夜型化し夜の入眠時間が昔に比べて 1~2 時間以上も遅くなっているために サーカ・セメンディアンリズムもずれてきていて昼寝の時間も 14~17 時頃の時間に ずれている。あるいは夜の入眠時間が遅いが、起床時間は昔と変わっていないため に、朝起きに無理が生じ、昼寝が本来の生体リズムであるサーカ・セメンディアン リズムによっておこるものではなく、睡眠不足を補充するものになってしまってい る可能性がある」といわれています。「特にこの 12 時~15 時の中でも 14 時頃の眠気 というのがこのサーカ・セメンディアンリズムのピークであり、その時間に昼寝を することで生体リズムを整えている。」と言われています。つまり昼寝は夜の寝る時 間を調整するということではなく、生活リズムを整えることになるのです。

 

このような生体リズムのズレは「うつ病、パニック障害、自閉症、アトピー性皮膚 炎などの免疫機能、自律神経機能」などの障害や発達障害においても非常に深くかかわっているということが事例としてあり、今研究されています。そして、その一 端が今回参加した赤ちゃん学会です。

 

私たちの仕事は生活リズムを整えることも保育の仕事の一つだと捉えています。今 後とも保護者の方と一緒に考えながら、子どもたちの成長発達を考えていきたいと 思います。そして、健やかな成長ができるように見守っていきたいですね。