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6月 巻頭言 研究から見えるもの

副園長のコラムcolumn巻頭言

先日、保育学会がありました。現在行われていく保育の実践において、様々な研究が行われていますが、それらをまとめて、一つの発表の場として行われているのですが、今年のテーマは「アーリー・スタート ~非認知能力研究の知見を保育に生かす~」という内容で行われました。

 

今回の内容の中では、「非認知能力」というのが一つのキーワードとなっています。今回の学会ではこのことについて、NHKの「すくすく子育て」でも有名な東京大学の遠藤利彦先生が基調講演をされました。遠藤先生はこの講演の中で「認知信仰のゆらぎ」というものを紹介されていたのですが、その内容に20世紀末ごろまで「頭の良さが富裕につながる」と言われていましたが、最近の研究が進んでいく中で「IQ」(知能指数)よりも「EQ」(感情知性)のほうが幸せにつながるということを紹介していました。

 

感情知性というのはアメリカの心理学者のダニエル・ゴールドマンが1995年に出した「Emotional Intelligence」で発表したもので、「感情知性(EQ)こそが幸福や適応性の重要な鍵」であるといったのです。元々この感情知性はビジネスで話題となったのですが、子どもの教育に対して提案をしたのがアメリカの経済学者ジェームス・ヘックマンです。彼は乳幼児期の保育が40歳頃の経済状態・幸福を分けるということをペリー就学前計画から証明し、乳幼児期の教育が大人になった時の様々な問題に対する影響を示しました。そして、その中でも数値やテストによって調べられる「認知スキル」よりも、計測しづらい社会性や自己意識といった「非認知スキル」といったものが生涯の発達において大きく影響するといったのです。

 

では、この非認知スキルというのはどのようにして獲得できるのかというと、そこには3つの視点があると遠藤先生は紹介していました。それは「自己に関わる心の性質」これは自分を大切にし、適切にコントロールして、もっと高めようとする力です。「社会性に関わる心の性質」は集団の中に溶け込み人との関係を作り維持していくための力、そして、それらと両面的に関わる「感情の管理(制御・調整)」これは例えば選択をするときのジレンマであったり、人との関わりの中での葛藤です。

 

これらの能力は子どもたちが自らの関わりや自己評価、他者との関係性によって得ることが出来ることになると言われています。こういった研究を見ていると改めて、子どもたちが友だちと関わり、自ら進んで活動する中で得る達成感の重要さと、それらを保障する環境の大切さを感じます。と同時に、幼稚園として、今入園してくれている子どもたちに対しても、幸せな人生を過ごしてもらうために、環境をどう整え、前述にあるように自分で考えたり、選択したり、社会の中に参画するような保育ができるのかを考えていかなければいけないと改めて考えさせられる機会となりました。

邨橋 智樹